モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。
最近の経済指標は経済が当面ソフトランディングもハードランディングもしない可能性を示しています。景気が好調な間、高クオリティ株を求めるべき理由を弊社チーフ米国株式ストラテジストが解説します。
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本日は弊社のチーフ・インベストメント・オフィサー兼チーフ米国株式ストラテジストのMike Wilsonが、経済成長の上昇としつこいインフレが株式に及ぼす影響についてお話します。本動画は2024年4月22日にニューヨークで録画したものです。
今年最初のレポートでは、24年のマクロ経済は3つのシナリオが同程度の確率で予想されるとお話ししました。
ひとつは、GDP成長率が鈍化、あるいは潜在成長率を下回り、インフレ率がFRBの2%の目標を割り込むソフトランディングです。2つ目は、GDP成長率が再び上昇し、しつこいインフレが続くノーランディングです。そして3つ目がハードランディング、つまり景気後退です。
言うまでもなく、この3つのシナリオは資産価格全般や、特に株式のリード役に全く異なる影響を及ぼします。市場コンセンサスは2-3カ月前にはソフトランディングに強く偏っていました。しかし、最近の成長率やインフレ率は、FRBも含めた大方の予想を上回っており、マクロ経済指標はノーランディングを裏づけるようになりました。
この1年間に市場のコンセンサスは変化し、23年1Qにはハードランディングでしたが、23年2Qにはソフトランディング、23年3Qにはハードランディング、23年4Qにはソフトランディング、そして現時点ではノーランディングを予想しています。この変化が市場にも影響し、インフレ加速がプラスに働く資産はここ数カ月間好調です。しかし、景気に敏感な銘柄やセクターがアウトパフォームし始めた一方で、高クオリティ株が市場の重要なリード役である状態が続いています。
この高クオリティと景気敏感株という2つのファクターが理に適うのは、成長が再び加速するサイクル序盤ではなく、サイクル終盤だと考えます。もし現在がサイクル序盤であるならば、低クオリティの景気敏感株や小型株がこれほどアンダーパフォームし続けることはないはずです。また、この1年間の経済成長率が上振れた大きな原因は財政出動であり、負債で賄った結果、財政赤字が拡大しています。
その結果、多くの中小企業や低クオリティ企業は「クラウディングアウト」の状態となり、小規模企業の企業心理は2012年以来最低に落ち込んでいます。財政出動はたいがいがそうですが、基礎的な個人所得、消費、支出を支えとしたより持続的な成長に至るまで、支援をつないで時間を稼ぐことが目的です。
このような結果が確実になるまで、株式市場ではクオリティ重視の取引が続くでしょう。株式全体にとって最大のリスクは10年物国債利回りの上昇です。インフレが加速し、際限のない赤字を埋めるために国債の発行も増えて、投資家の要求するタームプレミアムが上昇し始めるためです。
重要なこととして、株式と10年物国債利回りの相関係数はここ1カ月で完全にマイナスに転じ、インフレ率は上昇しています。当然ながら、小型株と低クオリティの景気敏感株は負債比率が高いために最も値下がりしています。昨年10月以降の上昇相場は大部分が金利低下によるバリュエーションの上昇が原因であり、したがって金利が上昇すればマルチプルは低下すると考えるべきでしょう。
株式市場のリード役となる銘柄は景気敏感株にまで裾野が広がっていますが、引き続きクオリティの高い銘柄に絞るのが妥当です。先頃、エネルギー大型株のウェイトを引き上げましたが、これはノーランディング・シナリオへの移行に沿っており、リフレというテーマに合致した最も割安な投資のひとつです。その他にもリフレトレードは広範囲に広がっていると考えます。現在、株式にとって最大の問題は積極的な財政出動によって経済成長が高まったことです。しかし、そのためにインフレ率が上昇し、FRBは経済界の多くが現在切望する利下げに踏み切れずにいます。
つまり、ノーランディングとなった場合、中小企業、多くの消費者、さらには地銀も、クラウディングアウトが深刻化するでしょう。これは弊社の2024年見通しとも合致し、主要株株価指数は割高で、最良の機会はしつこいインフレと金利上昇がプラスに働くエネルギーのような過小評価されているセクターに埋もれていると思われます。
本日はご清聴いただきありがとうございました。ポッドキャストをお楽しみいただけましたら、お聞きになった内容のご感想をご記入いただき、ご友人やご同僚にもThoughts on the Marketをシェアしていただけると幸いです。