モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。
2024年の石油需要はこれまでのところ予想を上回っています。原油価格が夏までに1バレル95ドルに上昇するかもしれない理由を弊社グローバル・コモディティ・ストラテジストが説明します。
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Thoughts on the Marketをご視聴の皆様、モルガンスタンレーでグローバル・コモディティ・ストラテジストを務めるMartijn Ratsです。弊社では皆様に様々な視点をご紹介しておりますが、本日は最近の原油市場の動向を取り上げます。現在のロンドンは、4月5日金曜日、午後4時です。
年明け時点では、石油市場の見通しはあまり良好とは思えませんでした。コロナ禍からほぼ回復し終わり、石油需要の伸びが鈍っていたためです。また、非OPEC産油国からの供給が力強く伸びており、年内はこの状況が続くと考えました。実際、年明け時点では、非OPEC諸国からの供給量の増加は、世界全体の需要増加に見合う、あるいはそれを超える勢いのように見えました。そうなれば、石油市場におけるOPECの位置づけは、よく見ても進展がなく、したがってOPECは減産を継続して市場の均衡を保つ必要があります。その場合でも市場シェアは低下し、余剰生産能力が積み上がります。歴史はこのような時期にしばしば警告を発してきました。
それでも2月初旬には、石油市場の需給が当初の予想よりも引き締まってきました。これは需要がサプライズ的に上振れし始めたためです。まず、航空需要が予想より好調となり、ジェット燃料が上振れました。また、船舶がスエズ運河を回避して長距離の迂回ルートに変更した結果、バンカーオイルも上振れました。さらに、エチレン製造装置が世界的に増加して石油化学原料の石油も上振れています。その一方、複数の非OPEC産油国では年初の生産が低調となりました。特に米国では1月中旬の大寒波の影響で油井の操業停止が相次ぎ、需要が増加して供給は減少した結果、弊社が年初に予想していたような在庫の積み上げは実現しませんでした。
2月中旬には、今年の石油市場は若干の供給過剰ではなく、むしろ需給が均衡しているように見えたと言えます。そして3月上旬には、石油市場のファンダメンタルズは強く、ブレント原油は夏にかけて1バレル90ドルに達すると見通せるようになりました。
それ以降、ブレント原油は予想以上に早く90ドルの水準に向かいました。先週あたりの原油市場は力強い上昇を見せましたが、これは単にファンダメンタルズの引き締まりが証明されたというだけでなく、地政学的なリスクプレミアムが再び価格に織り込まれた結果でもあります。当面、弊社予想の基本ケースでは引き続き夏場のブレント原油価格を現在のファンダメンタルズがサポートする1バレル90ドル近辺と想定しています。
ただし、石油市場は一般的には夏場に季節的な需要の追い風を受けます。それがこの先見込まれるわけです。そして、地政学リスクは未だに高止まりしていますが、石油はそれを分散する要素として役立ちます。これらの要素を踏まえると、弊社の強気ケースで予想する95ドルも現実味を帯びてきます。
本日はご清聴ありがとうございました。ポッドキャストをお楽しみいただけましたら、お聞きになった内容のご感想をご記入いただき、ご友人やご同僚にもThoughts on the Marketをシェアしていただけると幸いです。