モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。
モルガン・スタンレーの社債リサーチ責任者が、クレジット市場における投資機会について紹介します。なぜ今後12ヶ月間のクレジット市場が良好に推移するのか、詳しく解説します。
このエピソードを英語で聴く方はこちら。
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「市場の風を読む」Thoughts on the Market へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
今回は、 モルガン・スタンレーの社債リサーチ責任者Andrew Sheets(アンドリュー・シーツ)が今後12ヶ月間 の クレジット市場について考察していきます 。このエピソードは2024年5月24日金曜日にニューヨークで収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は概要欄に記載しているURLをクリックしてください。
モルガン・スタンレーのグローバル経済とストラテジーチームは、先日、ミッドイヤー・アウトルックを出版しました。私たちは年 2回、メンバー全員が集まって、今後12ヶ月間の見通しについて議論を重ねます。クレジット市場に関しては、依然として良好な市場環境が維持される と考えています。
企業向け融資に代表されるクレジット市場 は、極端な環境に弱く、適度であることが理想な資産クラスです。景気が悪化し企業の破綻リスクが高まると、過去の同じような状況では一貫してリターンを期待することができなくなりました。一方で景気が良すぎると、企業は一段とリスクをとり、それにより得られた利益は、貸し手の利益とはならず株主に配分されるという問題が発生します。
モルガン・スタンレーのエコノミストの最新の予想によると、経済成長はまさに「適度」と予想しており、クレジット市場には朗報だといえるでしょう。弊社は、今年と来年の 米国経済は年おおよそ約2%、欧州経済は年おおよそ約1%の成長率になるとみています。まさに「適度」であり、「クレジットの最適」ゾーンに該当します。
私たちはインフレが緩和し、今後 12ヵ月間で、米国と欧州のコアインフレ率が2%に戻る と予想しています。さらに、インフレ率の低下 に伴い、FRB(Federal Reserve:連邦準備制度理事会)、ECB(European Central Bank:欧州中央銀行)、BOE(Bank of England:イングランド銀行) による政策金利の低下が予想され 、金融政策も「適度」な水準に落ち着くでしょう 。
適度な経済成長と、緩やかなインフレ、緩和的な金利などが見据えられた予想は、市場に歓迎され、まさにクレジット市場にとって理想的な環境といえます。もちろん、スプレッドは縮小しており、リスクプレミアムの低下など多くの好材料をすでに織り込み始めているという側面もあります。では投資家は、依然として非常に良好な経済状況下で割高となった バリュエーションにどのように対応すればいいのでしょうか。
私たちが注目しているのは、利回りやスプレッドが魅力的なレバレッジドローンです。 米国ではローンの利回りが 依然として9%を超えています。また、短期のIG債も有望であり、金利収入と安定性の優れた組み合わせが得られると考えられる上、弊社の金利チームも今後、利回りが最も大きく低下するのは短期の債券だと予想しています。
利回りが予想通りに低下すれば、トータル リターンにも貢献する でしょう。欧州のクレジット に関しては、 スプレッドが特にタイトだとは私たちは考えて いません。これは 、弊社のエクイティ・ストラテジーチーム による比較的強気な 欧州株式市場の見通しからも裏付けられているでしょう。 適度な成長を見込んだモルガン・スタンレーのマクロ経済予想は、クレジット市場にもプラスに働くでしょう。
バリュエーションのタイト化は 課題となりますが、「適度」な経済状況がしばらく続くのであれば、バリエーションも高止まりする可能性も大いにあるでしょう。このように私たちはクレジット市場にチャンスがあると考えています。投資家は銘柄を慎重に選択した上で、引き続き金融動向を見極めてください。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。