モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。
生成AIはデータセンターを飛躍的な成長に導くだろう。モルガン・スタンレーの資本財担当のアナリストが、データセンター市場の中核をなす電子機器についてのキーポイントをお届けします。
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こんにちは。「市場の風を読む 」Thoughts on the Marketです。モルガン・スタンレーから金融市場動向の考察をお届けします。本日は、AI革命における極めて重要な要素について、欧州資本財チームのMax Yates(マックス・イエーツ)が考察していきます。このエピソードは、2024年4月18日木曜日、ロンドンで収録されたものです。
ここ数週間、本番組では、データセンターの飛躍的な成長、ならびに、生成AI革命の加速に必要な要素についてお話ししてきました。例えば、モルガン・スタンレーのグローバル・サステナビリティ・チームを率いるStephen Byrd(スティーブン・バード)による「2027年のデータセンターでの生成AIによる電力消費量は、2022年におけるデータセンター全体の電力消費量の80%にまで及ぶだろう」といった予測などです。
彼の予測に基づいて考えると、市場の需要に追いつくために、データセンターの大規模な増加、及びアップグレードが必要になるといえます。そして、もう一つ明らかなのは、AI活用が進むことによって、電子機器メーカーに非常に大きなチャンスが訪れること。電子機器メーカーこそ、AI革命における"ピック・アンド・ショベル"なのです。こうした企業は、データセンターのインフラ管理ソフトウェアや接続機器、ラック、スイッチギア、重要な冷却システムなどといった、主要なソリューションを提供しています。
ここで忘れてはいけないのは、AIを巡る猛スピードの競争では、絶え間ない効率化が必要不可欠であることです。ここで一度、あなたが実際にデータセンターの中に入ったシーンをイメージしてみてください。まず目に入るのは膨大な数のラックです。これらのラックはサーバーやケーブル、その他の機器を設置するためのもので、スチールでできています。また、生成AIを作動させている電力によって、かなりの熱を出しています。
最近弊社が実施したデータセンター市場についての調査結果では、電子機器に関して2つの重要なポイントが示唆されました。1つ目のポイントは、需要と供給に大きな不均衡があることです。データセンターの空室率と賃料を分析すると、データセンターの容量不足が進んでいることが明らかになります。今年、クラウド・プロバイダーの上位10社が、設備投資を26%増やしたことにも説明がつきます。機器不足と納品までのリードタイムは生成AI業界の課題となっており、その中で大手のサプライヤーは、強力なサプライチェーンと納品力によって明確な競争優位となっています。
2つ目のポイントは、電力密度上昇への対処方法。これにはよく知られている方法と、あまり知られていない方法があります。現在、なぜ電力密度は上昇しているのでしょうか?その理由は、同じ面積の中に、できるだけ多くの高性能チップを詰め込もうとしているためです。つまり、より多くの電力消費とより高い計算負荷を、より小さい床面積で対応する必要があるということです。しかし、こうした電力密度の上昇を実現するためには、強力な冷却ソリューションが求められます。
一方で、生成AI業界ではあまり知られていないものの、空調管理によって熱を逃がすという、小規模な改善方法もあります。例えば「バスウェイ」と呼ばれる、ケーブル密度を低減し、空気の流れをよくする設備などです。また、スマート機器を活用することで、電力消費に関する情報を得られるようになっており、さらに、リアドア方式の冷却を利用することでサーバー間の気流も改良できています。
生成AI業界の規模拡大に弾みをつけるものとして、注目されているテーマがもう一つあります。それは「モジュラー型データセンター」です。
「モジュラー型データセンター」でデータセンター自体が標準化されることにより、機器サプライヤーのサプライチェーン構築を助けるだけでなく、迅速な規模拡大が可能になることで、データセンター需要の増加への対応を実現できます。ただ現時点では、AIに対応できるような高密度電力とラックを管理する上での業界標準はありません。
今後も新たなデータセンターの建設が続くと思われ、データセンターのアップグレードも予想されます。しかし、電源機器の具体的なコンフィギュレーションや、データセンターのアップグレードを行うタイミングについてのコンセンサスはまだありません。その様式や方法についても同様です。
ダイナミックに変化し、目が離せない生成AI業界。弊社では引き続き最新情報をお届けして参ります。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、みなさまにシェアしていただけると幸いです。